世界で活躍している宇多田ヒカル、彼女の生声はとにかくすごい、心地よい周波が出てるなどと聞いたことがある。そんなことは別として純粋にあの難しい歌をどんな風に歌い上げるのか?どんな声を響かせるのか?興味があった。何より同じ世代でずっと聴いてきた曲がたくさんあったしあの歌唱力を生で聴いてみたいとずっと思っていた。そして2024年7月さいたまアリーナでの公演に当選したもんで幸運にも行けることとなった。携帯での電子チケットで譲渡などは簡単にはできない仕組みとなっており、席順などは当日入館のその時までわからないのだ。結果まぁ近くはなかったけど、ドア付近の角で快適だしみやすい席だったので良かった。早速始まったライブ、TVで見てたそのままの彼女の声が会場に響いて同じ空間で同じ時を過ごしてることに感激した。
インフラが全て止まり明日食べる物がなくとち狂った母に殺されかけた14歳、彼女は日本を一世風靡した。母が狂っている最中で毎日聞いていたのが「Wait&See〜リスク〜」。この曲を歌い出した瞬間鳥肌が立ち全身が身震いした。そして涙が溢れた。当時の絶望的な毎日を思い出し、やがて今の幸せを噛み締めた。あれから25年が立ちそれほどまでに時が過ぎたという実感があった。歌を創り人々を魅了している15歳。かたや電気のない暗闇の中で布団に包まり暖をとりながら野良犬と二人、担任からカップラーメンとお湯を届けてもらい、生きるのに必死な15歳。今でいう親ガチャの違い、ハズれてしまった現実にずっと苛立っていた。だけど自分の中で昇華し、親を許せた今だからこそ、彼女の歌が響いた。
中でも「誰かの願いが叶うころ」は立ちすくみ息を飲んで聞き入った。素晴らしい。彼女のバラードは私の体にスッと入り込んで身体中にじんわりと広がった。胎教にいいのがわかる。オレンジの声、彼女の音色を感じた。1曲終えるごとに「ありがとう」という。彼女は全てが当たり前じゃないということを知っている。飾らず素直に言葉を放つ。同じ瞬間を共有したからこそ気づけなかったことにたくさん気づけたような気がした。私の人生の前半戦はアウェイだったけど、後半戦は巻き返す!そう密かに思ったよ。